桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
契約結婚から想い合う仲へ
気持ちが通じ合っても私たちはキス以上進むことは無かった。
あの日……私は月菜さんと柚瑠木さんにお礼を言って今まで匡介さんと暮らしてきた家へと帰り、二人で穏やかな時間を過ごした。
匡介さんに言われるままにお風呂を済ませ、彼に優しく抱き寄せられて幸せだった。
「杏凛、きょうから一緒の部屋で眠らないか?」
そう匡介さんから言われたときは、大きく胸がはねた。思いは通じ合ったしそれもおかしくない流れかもしれない、そう覚悟を決めて彼のベッドに入ったつもりだったのだけど……
そんな私を匡介さんは優しく腕の中へと抱き寄せるだけで、そのまま眠ってしまったのだ。
それから何度一緒に同じベッドで眠っても、匡介さんは軽いキスだけを私に落として目を閉じる。そんな日が続いていた……
「私に魅力が無いってことかしら?」
この歳までまともなお付き合いをした事の無い私には、匡介さんをその気にさせるほどの女としての色気が無いのかもしれない。きっちり上まで閉めたパジャマのボタンを外してみたり、いつもと違う甘い香りのボディーオイルを塗ってみたりしたが効果は全くなさそうだった。
もっと先に進みたい、相手の全てを知りたいのは私だけなのかしら? 私が焦り過ぎてるのか、でも夫婦なら当たり前の事なのではないかと随分迷ってしまって。
……でもそんな私の不安な気持ちも、ちゃんと彼は気付いてくれていた。