桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜


 そう、あれだけ悩まされた悪夢も今はほとんど悩まされることはない。見ても目を開ければ匡介(きょうすけ)さんが傍にいてくれる、それだけでずいぶん落ち着いた。
 長年悩んでいた発作も今は随分減り、安定してきたねと鵜方(うがた)先生にも褒められたくらいだった。
 ……もしかしたら近いうちに、飲んでいる薬も減らせるようになるかもしれない。いつか二人の子供を望める日が来るかもしれないのだと、そんな希望さえ持てるようになっていた。

「怒っている時間がもったいないだろう、手伝うから急いで準備をするといい」

「言われなくてもそうします!」

 素直に分かりましたと言えない、そんな私なのに匡介さんは嬉しそうに見てるから調子が狂う。こんな気の強い強情妻でも、彼には誰よりも可愛く見えるらしいのだから。

「匡介さんは先に昨日作っておいた料理を並べておいてくださいね?」

「分かってるから、君は気にせず自分の事だけやればいい」

 ……そうやってまた甘やかす、こういうとこは全く変える気はないらしい。でもそんな匡介さんだから私も素直になれるようになった。
 その腕に飛び込む勇気が持てた。だから、これからもずっとそのままでいて欲しい。

【ピンポーン】

 私の準備が終わると同時に玄関のチャイムが鳴る、私と匡介さんは並んでドアを開けて……

「いらっしゃい、聖壱(せいいち)さんと香津美(かつみ)さん、柚瑠木(ゆるぎ)さんと月菜(つきな)さんも。さあ、あがって!」

 ――そうやって私たちの契約結婚は、二人の輝ける未来へと形を変えていくのだから。


      ―END―

     2022/02/15 花吹


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