桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
そんなちょっとしたことで、気持ちが少しだけふわふわするような気がするのはいったい何故? 私はこの人からどんな風に思われても構わないと思っていたのに、意外と本音はそうでもなかったのかもしれない。
匡介さんは逸らしていた視線をゆっくりと戻すと、私が寧々との会話の内容を話すのをじっと待っている。
「でも、私と寧々はそんな匡介さんが聞いて面白い様な話なんて……」
そう言いかけてふと思い出してしまう、今日の話題は新婚の夜に私を一人にした匡介さんへの不満ばかりだったことを。
確かに新婚の妻を置いて朝帰りをした匡介さんが悪いとは思う。だけど今はその話を蒸し返したくもないし、匡介さんの不満で盛り上がったなんて本人に言えるわけもない。
それなのに……
「面白くないか面白いかではなく、杏凛が普段どんな話をしているのかを知りたいだけだ」
「……どうして? そんな事をわざわざ知ろうとしなくても……」
私達は三年間という期限付きの夫婦でしかない、ならば相手を深く知ろうとするより何も知らないままの方が良いのではないかと思う。相手を知れば知るほど色んな感情が胸の中で育ってしまう事だってあるかもしれない。
でも、そんなのきっとこの結婚には必要ないはずのものだから……