桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜


「……夫の俺が、妻を知ろうとする事に理由がいるのか?」

 嫌味でも何でもない、本当に匡介(きょうすけ)さんは私の言っている事が不思議だと言うように聞き返す。私からすればそんな匡介さんの方がよく分からないというのに。
 少しでも匡介さんの事を知ろうとせずに、契約結婚だからと距離を縮める努力なんて不要だと思っていた。でももしかしたら夫である彼はそうではないのかもしれない。

「でも私達は、普通の結婚ではないですから……」

 さすがにこんな場所で契約結婚という言葉を使うのは躊躇われて、ぼかして言ったつもりだったけれど匡介さんの肩眉がピクリと動いた事に気付く。

杏凛(あんり)は俺達がどんな形で結婚したかを気にしているのか? だとしても……俺にはこうするしか方法が無かったからな」

「……方法が無かった? それはいったい何のことですか?」

 匡介さんの言葉に引っ掛かりを感じて思わず聞き返す、彼の言葉にどこか後ろめたさを感じたのは私の気のせいなのかもしれないけれど。
 だけど、そんな時に限って……

「お待たせしました。こちらが二種のベリーのハニートーストで、こっちは春の胸キュン・苺ミルクハニートーストになります!」

 と、私の前に置かれたもの凄く甘そうな香りの春の胸キュン・イチゴハニートースト……まさか、これを匡介さんが?


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