桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
すぐに引っ込められた手にホッとしたと同時に、ほんの少しだけ残念な気がしたのはなぜかしら? それでもクスクスと笑う私をみて、戸惑う匡介さんの表情でますます笑いが止まらなくなる。
勝手に持っていたイメージなんて、こうして一緒に行動するだけで実際は全く違うものだと知る事になるのだから。
私は匡介さんの事を深く知りたくなんてないかったし、匡介さんに私の事を知ろうとして欲しくも無かった。たった数年だけを一緒に暮らすだけの関係なのならば、そこに余計な感情を挟むようなことはしたくない。
そう思ってこの契約結婚をすることを決めたはずだったのに……
「ふふ、私が笑うのはそんなに変な事ですか? 匡介さんだってさっきから、その強面に似合わない事ばかりしてるのに」
こうして匡介さんのギャップに驚き、長い間私が彼に持っていたイメージをメチャクチャに壊されていくことに笑いが止まらなくて。
知りたくないと思っていたのに、いざ匡介さんの事を知ると嫌な気持ちなんて少しも感じないの。
「強面……杏凛、やはり君もそう思うのか? 俺の顔面を見ただけで怖くて近寄りがたいと」
「怖い、ですか? 匡介さんの顔は昔からそうでしたから、今更怖いかと聞かれても……」
そう言えば昔から匡介さんは私の事を鋭い瞳で見つめていた、でも彼の事を怖いと感じたことはあっただろうか? ずっと睨まれていて苦手な人だと思ってはいたけれど……