桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「ずっと……嫌われているのかと思ってましたから、私は匡介さんに」
それがいつからだったのかはなぜか覚えていない、気付いた時には匡介さんからジッと見つめられるようになっていたから。
嫌っているのならこっちを見なければいいのにと思いながらも、なぜか私も彼からよく見える位置にばかりいた。ジッと見つける彼と見つめられる私、それだけの関係が何年も続いていた。
「杏凛は何故俺に嫌われていると感じたんだ? それに、そんな相手の妻になる事を君は嫌だとは思わなかったのか?」
とても意外だった。あの刺すような視線を私にずっと向けていたことに、匡介さんはこれっぽっちも自覚が無かったのだから。
それならば、ずっと彼に睨まれていると思っていたのは私のただの勘違いだったというの? じゃあ、匡介さんは何のために私の方ばかりを見て……?
「あの、匡介さんはいつも集まりの時に私の事を見ていらっしゃいましたよね? だから私はてっきり……」
さすがに睨んでましたよね、とは言えず。やんわりとした言い方に変えて匡介さんに伝えてみた。最後の方は少し誤魔化すような形になってしまったけれど。
だけどその私の言葉を聞いた匡介さんは、その大きな手で口元を覆い隠してしまって。