桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「匡介さん? あの、どうしたんですか」
まさか匡介さんは私が彼の視線に気付いていないと思っていたの? あんなにジッと見られていてその瞳に気づかないなんてことある訳ないのに。
だけど匡介さんは困ったように視線を彷徨わせ、ハニートーストをフォークでつついている。返事を待つ私に匡介さんはその質問に答えようとせずに……
「杏凛も早く食べるといい、あまり遅くなっては寧々も心配するだろう」
寧々は私達にごゆっくり、と言ってましたけれど。どうやら匡介さんはこの話について終わりにしてしまいたいようで。私も深く追求するようなことはしなかった。
私がそうであるように、匡介さんも妻である私と間違いなく距離を取っている。この夫婦関係にそれは必要な事だから仕方ない。
そう分かっているのに、この胸のどこかでガッカリしているような気がするから……
「どこでも……匡介さんは好きなだけ付き合ってくれると言いました」
諦めて黙ってハニートーストを口に運ぼうとしたけど、そんな私の口からはまるで拗ねたような台詞が出てきてしまう。あの時の匡介さんの言葉はちょっと違ったけれど、それを自分の都合良いように少しだけ変えてしまっていた。
「杏凛? もしかして君は……」