桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「それは君の言う通りだが、もしもの事があっては……」
匡介さんのその言葉にはちゃんと意味がある事は知っているの、だけどそれを言い訳のように今出された事に納得いかなくてムッとしてしまう。この人はただ私の事を心配してくれただけなのかもしれないのに。
不規則に発作を起こしてしまう、そんなこの身体と心の事は自分が一番理解してる。だからと言って必要以上に心配されることなど私は望んではいなくて。
「もしも、なんていつ起こるか分からないですよね? それは十年後かもしれないし、今すぐなのかもしれない。なのにそんな事ばかり言っていたら私はいつも部屋の中にいるしかなくなります」
ちょっとした匡介さんの一言にムキになってしまってる自覚はあった。でもこれといって何か彼の役に立てるわけもない自分が、これ以上ただ甘やかされる存在になりそうなのも怖くて。
「しかし外出の疲れで症状が出やすくなる可能性も……いや、杏凛の言う通りにしよう。俺がすぐ隣についていればいいだけの話だ」
すぐに匡介さんの方が私に合わせてくれる、それでも彼が私の事を過保護に扱おうとすることには変わらなかったけれど。
きっと私はもの凄く可愛げのない妻に違いない。態度も発言もとても好意を持てるようなものではないはず。
だけどこんな私の祖父の会社を匡介さんは契約結婚をしてまで立て直そうとしてくれている。そう考えればこのままじゃいけないとちゃんと分かってるのに。