桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「ごめんなさい……」
自分勝手な理由で怒りそれを匡介さんの所為にして、それでも譲歩してくれる彼にありがとうという事も出来ない。ただこうして謝る事で精一杯な自分に自己嫌悪するしかなくて。
私の方が匡介さんのために出来る事など無いのだから、せめて彼に従順な妻でなければ。
そう心の中でしっかりと思い直して匡介さんに向き合おうとすると……
「なぜ君が謝る? 今の会話のどこに杏凛が謝る必要があった?」
「え? ですが私は、匡介さんが心配してくれたのに……」
匡介さんは遠回しな嫌味などは言わない人だという事は知っている。言葉少なめの男性ではあるけれど、その言葉は真っ直ぐだと。
では彼はこんな態度しか取れない妻の私に、少しも苛立ちを感じなかった?そんなはずは……
「さっきのは杏凛の意思も確認せず勝手に決めようとした俺が悪かった。その……体調を心配しているだけで俺は君の行動を制限したいわけじゃない」
いつもの強面のままなのに、匡介さんが必死で私に伝えようとしてくれていることが分かる。そんなこと無い、匡介さんの思いやりを捻くれて受け取ってしまった自分の方が悪いのに。
「どうしてそんなに心配する必要があるんです? 私なんて三年間だけの契約妻にすぎないんですよ」
「どんな形であろうと、今の杏凛は俺の妻だろう?」
匡介さんは私の事を妻だと言う、心配だとも言う。だけどその言葉を素直に受け取りたくても出来ない理由がちゃんとある。それは……
「じゃあ、そんな風に言いながら昨日の夜に私を一人にしたのは何故で――――っつ!」
感情的になりかけたその時、ヒュッと喉の奥から音がする。しまったと思った時にはもう遅くて……
「杏凛!?」