桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「連絡していた鏡谷だ。妻を早く休めたい、部屋を用意してくれ」
匡介さんが誰かと話す声が聞こえてそっと顔を上げると、そこは見知らぬホテルのフロントで。どうしてこんな場所にと聞くことも出来ず、匡介さんが受付でカードキーを受け取るのを見ていた。
そんな私に気が付いていないのか、彼は無言でエレベーターに乗り込みボタンを押して扉を閉める。
「あの……どう、して?」
「心配はいらない、ここに来たのは杏凛の身体を休めるためだ。君をベットに降ろしたら、すぐに主治医に連絡をする」
エレベーターの扉が開くと匡介さんはすぐに歩き出し、廊下の一番奥にある扉を開いた。さっき言った通り匡介さんは部屋に入ると真っ直ぐベットまで進むと、その上に私の身体をそっと降ろした。
私の身体を支えていた腕が離れかけたその時、サラリと前髪を梳くように彼の手のひらが触れた。
「熱は、無さそうだな」
どうやら匡介さんは私の熱を測ってくれたようなのだけど。急に額に触れられたことで、呼吸は落ち着き始めていたはずなのになんだか胸が苦しくて……
だけど、このまま匡介さんにずるずると甘えている訳にはいかない。
「私は、もう平気ですから。その、匡介さんはお好きな事をして……」
今は少し離れた方がいい。そんな気がしたのもあって、匡介さんに私の事は気にせず好きな事をして欲しいと言いかけた。
だけど、そんな私に匡介さんは……
「杏凛、俺は君と一緒に出掛けると言ったはずだ。少なくともこの時間に杏凛を置いてまでやりたいことは俺には無い」