桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「ですが……」
「今は何も考えず、身体と心を落ち着かせていればいい。俺は君の主治医と話をしてくるから」
そう言ってスマホを片手に匡介さんは部屋から出て行ってしまった。
私のこの発作は精神的な要因が大きく、こうやって安静にして過ごすなどの対処法しかない。匡介さんが取った行動は正しい、きっと私の病気について両親などから話を聞いたのでしょう。
ゆっくりと息が整っていくのを感じながら、私はぼんやりと一緒に過ごした匡介さんの事を考える。今日の彼は私が今まで思っていた匡介さんとはまるで違っていて、なんだかとても身近に感じられた気がする。
それに少しだけ大事にされているのかもしれないと思える時もあって……
「ただの契約妻なのに、あの人はどうしてこんなに優しくしてくれるの?」
もしかしたら昨日帰って来なかった罪悪感から、私へのご機嫌取りをしているのかもしれない。たくさんの服を妻の私に与え、次に夫婦で出かける予定を立てる。二人で甘いものを食べ、雰囲気を柔らかくしてしまえば私の機嫌くらい……
だけど、すぐに気付き頭を振る。匡介さんには私の為にそんな事をする必要なんてないのだと。
「だったら、なぜ?」
考えれば考えるほどに分からなくなっていく。シーツを深くかぶって「んんん……」と唸っても結局答えは出なくて……
そうしているうちにカチャリ、と部屋の扉が開く音がした。