桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「謝る必要はない、俺はただ自分の考えを杏凛に知って欲しかっただけだ。そして……俺も君の考えている事を知りたいと思っている」
「私の考えている事を、ですか……?」
匡介さんが怒っても仕方ない発言ばかりなのに、彼は決して私を責めようとはしない。それどころか彼はそんな私の事を理解しようとしてくれる。
彼のこの言動は、本当にただの契約妻に対してのものなの? もしかしたら何か他に理由があるのかもしれない、どうしてもそうやって後ろ向きに考えてしまう。
それなのに……
「ああ、もっと杏凛の事を知りたい。君がどうすれば笑ってくれるか、どうすれば沈んだ顔をさせずに済むのか……どうすれば俺を頼ってくれるのか、色んなことを君から聞きたい」
かあああっと一気に顔が熱くなってくるのが分かった。今のはいったい何、匡介さんは何を考えてこんな事を言うの?
私を笑わせたい、私の沈んだ顔が見たくない。そして私に頼って欲しい、なんて……それじゃあまるで私を本当の妻のように扱いたいと言っているみたいじゃない。
「杏凛、どうした? 少し顔色が……もしかして熱が出たのだろうか」
「……っ!」
そう言って再び伸ばされた手、動揺したままの私は匡介さんの手のひらから逃げるように身体を反らしてしまったのだった。