桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「だって、匡介さんが私の話を勝手に……」
そう、彼は私の話を最後まで聞こうとせずに勝手に自己完結しようとする。それも私の言いたいことを大きく勘違いした状態で。
触るなとも話すなとも匡介さんに言ったことなど無いのに、貴方はどうしてそんな風に思ったの?
「そうだな、俺がきちんと君の話を聞いていなかった。今度はちゃんと杏凛の言いたいことを聞くから……」
さあ話せというように私の方へと耳を傾けられると、驚いて言いたい事も吹っ飛んでしまって。ああ、本当にこの人は自分の思った通りの行動をとっているのかもしれない、そんな風に思えてきたの。
「……やだもう、言いたい事全部忘れてしまったみたい。そんな怖い顔して子供みたいな事をするだなんて、ふふっ」
それでもそんな姿がちょっと可愛いと思ってしまうあたり、私もどうかしてるのかもしれないけれど。笑う私を匡介さんは不思議そうな顔で見ている。
彼は決してそんな私の事を怒ったりはせず、ただ静かに私の手に自分のそれを重ねてきた。
「今日の杏凛はよく笑う、正直こんなに君の笑顔が見れるなんて思ってなかった」
そう言ってあいた方の手で、私の横髪にそっと触れてくるの。彼の優しい指が頬に触れると、なぜかその部分がジンジンと熱くなってくる気がする。