桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「私を笑わせてるのは、間違いなく匡介さんなんですけどね……」
どうやら私は匡介さんの《《彼らしくない》》行動を見るのが、そんなに嫌いではないらしい。しかし本人は意味が分からないようで、不思議そうに私を見つめているけれど。
不思議だった。ずっと前から私はこの人を知っていたはずなのに、近くに来てみてこんなにも匡介さんの事を知らなかった事に気付く。
「君が……杏凛が俺を見てそんな顔で笑ってくれるのなら、それでもべつに構わない。せめて俺の隣に居る間、そうしていてくれないか?」
「匡介さん……」
私は匡介さんのその言葉を、嬉しいようでほんの少し寂しいとも感じた。彼を見て笑えたとしてもそれは三年間という期間限定でしかない、それなのにどうして彼はそんな事を私に望むのか?
……そんな暖かな思い出など、この関係にはすぐに不要になるはずなのに。
「駄目か、杏凛?」
「……駄目ですよ、私は笑いたいときに笑います。これ以上匡介さんの言う事を聞くつもりはありません」
……結局、素直に離れなかった。匡介さんにはたくさんの優しさを貰っているのに、それを全て受け取ってしまうことが怖くて。このまま彼に優しさに触れてしまえば、そのうち私はきっと……