桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「……そうか、ならば仕方ない。俺は杏凛に無理をさせたいわけでもないから」
匡介さんのこんな簡単な頼みも聞いてあげれない、こんな彼に自分を揺らされるのが怖いから。それでも自分が傷付かないようにしてるだけなのに、匡介さんを傷付けてしまってる気がした。
「そうしてください、私はあまり過保護に構われるのは好きではありませんから」
「……杏凛の病気の事もあるんだ、それについては譲れない」
やっぱりこの病気の所為で私は匡介さんに迷惑をかけている、私の事なんか気にせず放っておいてくれてもいいのに真面目な彼にはそんなことは出来ないのかもしれない。
この人に優しくされてほんの少し嬉しくなって……でもそれが義務だと気付いてガッカリする。
「杏凛、君はもう休むといい。俺は一度家に戻り、寧々と話をしてから戻ってくる」
「寧々と、ですか?」
そう言えば寧々には留守番を頼んだままだった、彼女は今朝早くから来てくれたので疲れているはず。
「ああ、寧々も杏凛が帰って来なければ心配するだろう。君がここで休んでいる事を伝えてくるだけだ」
「分かりました」と返事をして、すぐに部屋から出て行く匡介さんの背中を見つめていた。
もぞもぞとベッドへもぐり込んで目を瞑るとまだ疲れが残っていたようで、そのまま深い眠りへと落ちていったのだった。