桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
契約結婚から新しい挑戦を


寧々(ねね)、このチラシはどうしたの?」

 いつものように朝早く家にやってきた寧々が、テーブルの上に一枚のチラシを置いたのを見て聞いてみる。
 カラフルなチラシにはおいしそうな料理と、エプロン姿のハンサムな男性。

「ああ、実はその料理教室が生徒さんを募集しているそうなんです。その写真の料理講師が私の幼馴染でして……まあ、勧誘を頼まれたって感じで」

「まあ、寧々に頼みごとが出来る男性がいたなんて。もしかして二人は特別な間柄だったり……?」

 自分の色恋関係の話は苦手だが、人のことの場合は話が別でワクワクドキドキして聞きたくなってしまう。私は椅子から立ち上がり、チラシを持ったまま寧々に詰め寄っていく。

「奥様、他人事だと思って興味津々じゃないですか! それは……その察してくださいよ」

「ええ? 本当にそうなの!? このイケメン料理男子の事を寧々が……」

 私の言葉に顔を真っ赤にしてキッチンの端に逃げ込んでしまった寧々、そんな恥ずかしがる姿も普段の彼女からは想像出来ない可愛らしいものだった。

「もう止めて下さい、杏凛(あんり)様。普段恋愛には興味ありませんって顔をしてるのに、人の恋愛ごとに関してだけ鋭いなんて迷惑ですー!」

「だって、気になるんだもの。あら、でも寧々はずっと愛しい恋人と暮らしているって言ってなかった?」

 ふと思い出した、私は今まで何度も寧々に家で待つ大切な人がいるのだと聞いた事があったことを。


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