桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「この料理教室に通いたい?」
夜遅くに帰って来た匡介さんにチラシを渡して、寧々から勧められた料理教室に通いたいのだと彼に話をしたのだ。
「はい、家で何もせず過ごすより何か新しい事に挑戦したみたくて。料理ならこれからも役に立ちますし」
「この家の事は寧々がしてくれるだろう? 杏凛が自分でする必要はないはずだ」
もちろんこうやっては反対されることは簡単に想像できてたし、こういう時に何と言えばいいのかも寧々がちゃんと教えてくれた。
ただ……その方法が本当に効果があるのかは分からないけれど。
「その……たまには匡介さんに妻の手料理を食べてもらいたい、そんな事を考えるのは駄目なんでしょうか?」
ええと、確かこの台詞を言ってから上目遣いで匡介さんをジッと見つめる……だったかしら?寧々の指示通りに言葉を間違えないよう気を付けて、背の高い匡介さんを見上げる。
「……っ!!」
すると匡介さんはそのまま一歩後ろに下がって、軽く首を振った。やはり寧々のよく分からない作戦は意味がなかったみたい。
そう思ったのに……
「君がそういうのなら、しばらくの間は様子を見てもいい。ただ決して無理はしないと約束して欲しい」
「本当にいいんですか? もちろん無理をしないように気を付けます」
聞き返すと匡介さんは小さく頷いて、一人で奥の寝室へと行ってしまった。まさか、彼が料理教室に通う許可をくれるなんて! 私は嬉しくて寧々に料理教室に通えそうだとメッセージを送った。