桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
そして料理教室初日、私は鞄に必要な物を準備して腕時計で時間を確認する。まだこの家を出るには早すぎるし、紅茶でも飲んでリラックスしようとキッチンに立つ。
お気に入りの茶葉を取り出してポットを準備しようとしたその時、玄関の鍵を開けられる音がした。
仕事の日はこんな時間に匡介さんが帰って来たことなど無い、使用人の寧々は今日は少し早めに帰ってもらった。
……じゃあ、いったい誰? 廊下からこちらに向かってくる足音に怯えキッチンに隠れようとしたのだけど。
「杏凛、そろそろ料理教室の時間だろう? 準備はもう出来ているのか」
「き、匡介さん!? どうしてこんな時間に貴方がここに……」
結婚して初めてのことだった、仕事の日に彼が残業もせずに帰って来たのは。もちろんその理由も全く見当がつかない。それなのに彼はごく当然のことのように……
「君について行くために決まっているだろう? 心配はいらない、今日の分の仕事はキッチリと仕上げて帰ってきている」
私について行くため……? でも私がこれから行く場所は最寄り駅近くの料理教室なんですけど、まさかそこにわざわざついて来ると?
「冗談、ですよね?」
「杏凛は俺がそんな冗談を言う男だと思っているのか?」
いえ、これっぽっちもそんな事を言うとは思えません……だからってこんなことを貴方が本気で考えているなんて信じられないでしょう!