桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「小学生の塾の送り迎えじゃあるまいし、料理教室くらい私一人でも通えます!」
そうでなくても徒歩で行けるほどの距離しかないのに、何のために匡介さんまでついて来る必要があるというのか? そんな私の戸惑いも気にせずに、匡介さんは「着替えてくる」とだけ言うと寝室へと消えてしまう。
時々だけど……彼は私の意見をまるで聞いてくれない時があるという事を知った。
「なんなの、本当に……?」
そんな私の小さな呟きは誰にも拾われることもないまま消えていく。私はまだ匡介さんの事を少しも理解出来ないままで……
私達の関係はこれでいいような気もするし、このままでは全然ダメな気もする。そうやって、ぐるぐる同じところを回っているだけ。
「杏凛、待たせてすまなかった。さあ行こうか?」
本当についてくる気満々の匡介さんを見て、私もつい嫌な顔をしてしまいそうになる。そこまで過保護になられても私は少しも嬉しくないんですけど。
「本当についてこなくていいんですよ、私は一人でのんびり歩いて行けますんで」
「ああ、俺も外を歩きたい気分だったから丁度いい」
わざわざ早く帰って来て、散歩がしたいなんて全然匡介さんらしくありません! 私はわざとゆっくり歩いたり、速足で進んでみたりしたけれどピタリと隣を歩く彼を遠ざけることは出来なかった。