桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「あの、今日からこの料理教室に通う鏡谷 杏凛です。よろしくお願いします」
私が一人で立っていると、すぐに二人の女性がやって来て声をかけてくれて……
でも先程の匡介さんとのやり取りを見られていたのかと思うと、恥ずかしさで頬が染まってしまってるかもしれない。
だけどそんな事は気にする様子も見せず、二人とも私の挨拶に笑顔を返してくれたの。
「奇遇ね、私達も今日からなのよ。私の名前は狭山 香津美、こちらこそよろしくね。早く仲良くなりたいし杏凛さんと呼ばせていただくわ」
一人は目鼻立ちのハッキリとした華やかな女性、とても美人で気の強そうなかんじもする。すぐに手を差し出してくれたので、私も彼女の手を握り返す。こうやって誰かと仲良くなれそうな気がするのは久しぶりなので、胸がドキドキしてきたり。
「そうなんですか?ああ、やっぱり勇気を出してあの人から離れる時間を作ってよかったわ!」
香津美さんも今日からなんて、少しだけ心が軽くなる気がした。自信が無かったけれど、自分一人じゃないと思うと、何故か何とかなる気がしてくるの。
そんな事を考えて心の中でガッツポーズをしていると……
「あの……私も今日から通い始めた二階堂 月菜です。杏凛さん、私とも仲良くして頂けますか?」
少し小柄で可憐な女性の月菜さんも挨拶してくれて、私と仲良くしたいって言ってくれたの。もう嬉しくて嬉しくて。
「もちろんです。香津美さん、月菜さん……お願いです、これから私のお友達になってくれませんか?」
こんな風に友達になってとお願いするのは何年ぶりかしら、ずっと病気のことで心配かけないようにと家でジッとしていたから。
「ええ、もちろんよ。こちらこそこれから仲良くしましょうね?」
「よろしくお願いします、杏凛さん」
本当に勇気を出して匡介さんに許可をもらって良かったわ、こうして新しい友達が出来たことで私の心はふわふわと宙に浮いてしまっているようだった。
……料理教室が終わって扉を出た途端に、外で待っていた匡介さんに連れ帰られるまでの話だけど。