桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「まあ、杏凛様もたまには旦那様に素直に「嬉しい」くらい言ってあげてはどうですか? きっと旦那様なりに色々考えていらっしゃるんでしょうから」
私よりも寧々の方がずっと匡介さんの事を分かっているみたい、その事にちょっともやっするのを感じながらも彼女の言葉を真剣に聞いた。
「それだけでいいの? 本当にその言葉だけで匡介さんに私の気持ちがちゃんと伝わるのかしら?」
口下手の私はその言葉だけでも上手く言えず、黙ってしまっている事が多い。なので周りの人から愛想の悪い人間だと思われることも少なくなくて……
そんな私の事を匡介さんがどう思っているのかいまだに分からないままだった。
「杏凛様は無駄に気を使って言えもしないような長い文章を考えすぎなんです。まずはきちんと伝えられる短い言葉からチャレンジしてください」
「……そうね、寧々の言う通りだわ」
短い言葉なら、私だって素直な気持ちを伝えることが出来るかもしれない。本当は感謝しているし嬉しいと思っている事もあるのだと、匡介さんに知って欲しい。
「さあ、夕食の準備を始めますから手伝ってくださいよ? 料理教室でどれだけ上達しているかこれからチェックしてあげますから」
「まだ通い始めたばかりじゃない、無茶言わないで」
そうやって寧々は私が考えすぎないように気を使いながら、匡介さんとの予定の日に向けて色々なアドバイスをしてくれたのだった。