桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「ああ、新しい生活で鏡谷の使用人ばかりが通うのは杏凛も不安だろう? 君の両親と寧々さんを交えて話し合って決めさせてもらった」
彼女がここで働いてくれればもちろん嬉しいし、私も安心することが出来る。だけど私は匡介さんから何も聞かれてはいないのに……
寧々の事は両親に聞けばわかることかもしれないが、この家のインテリアが私好みなのももしかして……?そう思った後に首を振る、たった三年間の役にも立たない妻のためにそこまでする理由はないと。
「ありがとうございます、では先にお風呂に入らせていただきますね」
そう言って頭を下げれば、すぐに部屋の扉は閉められ彼の足音は遠ざかっていく。
彼との結婚が決まってからの半年間、私はあの手この手であの人の本心を探ろうとしてみた。匡介さんにとって、この結婚に何のメリットがあるのか分からないままだったから。
申し訳ないと思いつつも、彼の過去の女性関係まで調べさせてもらったけれど意味はなかった。
着替えを持ってバスルームへ行き、鍵をかけて服を脱ぐ。浴室は広く造られておりバスタブには乳白色のお湯が張られている。
私が実家で使っていた物と同じシャンプーやボディソープの横に、見慣れない男性用のそれが並べて置いてある。匡介さんの使ってそうなイメージそのままの真っ黒なボトルに笑ってしまいそうになる。
やっぱりあの人には白より黒が似合うわね、と。