桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
ピタリと匡介さんの足が止まった、不思議に思って彼を見ると口を手で押さえて瞳を彷徨わせている。一体どうしたのかしら、そう思い匡介さんに近付こうとした。
「私が何かおかしなことを言いましたか? 匡介さんの顔が……」
「……っつ!」
私が手を伸ばせば匡介さんは後ろへと下がってしまう。匡介さんらしくない行動、それにさっきから彼の顔が少し赤くなっているような気がして。
避けられるとそれなりに傷付きもするし理由を知りたくもなる、私は後ろに下がる匡介さんをジリジリと追い詰めた。
「どうして避けるんですか? 私はただ熱が無いかを確かめたいだけなのに」
「君が……っ! 杏凛がらしくない事を言うからだ。俺だって予定外の事が起これば混乱くらいする」
予定外の事? 今日のデートは全て匡介さんが予定を立てた通りに進んでいるのではないの? 彼の言葉の意味がよくわからなくて首を傾げると、匡介さんは深いため息をついた。
私としては分かりにくい説明しかしない、匡介さんも悪いと思うのだけど……
「もういいです、この話は家でも出来るしさっさと駅に行きましょう」
私は自分から匡介さんと手を握って、駅への道を進みだした。後ろで彼がどんな顔をしているのかを知りもしないで。