桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
「こうやって誰かと映画館に来たのは久しぶりだわ、本当に中に入って平気かしら?」
今日は日曜と言う事もあり、映画館もたくさんの人で溢れかえってる。どうやら人気の新作も上映が始まったばかりようでチケット販売期は長蛇の列、これに並ぶのは少し躊躇してしまう。
「杏凛が望むのなら、すぐに貸し切りにしてもらう事も出来るが?」
「貸し切りなんて、そんな事絶対に頼みません!」
分かってる、鏡谷コンツェルンの御曹司である匡介さんからすればそれだけの事だってなんなく出来ると言う事くらい。
自分だってお嬢様と言われるような立場ではあったけど、匡介さんとでは比べるまでもない。時々ひどく私達は釣り合ってない夫婦のような気がしてる。
「ああ、杏凛ならきっとそう言うと思って本当は何も話は通していない。もし発作が出たとしても、必ず俺が君の傍にいるから遠慮なく頼ってくれ」
真剣な顔でそう言われて、嫌ですなんて言える訳ない。どうして匡介さんは私の事をこんなに特別だと勘違いするほど大切に扱ってくれるの? 自分からこれは契約結婚だと言ったくせに、こうして過保護に私を甘やかしてくる。
「……そんな風に甘やかされたら、私は匡介さんばかり頼るようになってしまいます」
「ああ、杏凛がそうなればいいと思って言ってるんだ。だから構わない」
……まさか匡介さんがそんな事を考えているだなんて、思いもよらなかった彼の返事に身体が少しだけ暑くなった気がした。
「……そんなの私は、困ります」