桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
これが今の私の素直な気持ちだった。こんな風に必要以上に甘やかされても、契約の妻という立場でしかない私が単純に喜ぶことは出来なくて……
匡介さんが本当は私をどうしたいのか、これから先どうなっていきたいのかがまるで分からない。
「困る? いったいどうして? 俺達は夫婦なんだ、その相手を頼ってはいけない理由は無いだろう」
それは普通の夫婦で場合でしょう? 匡介さんは自分から契約結婚を提案してきたのに、彼の描いている契約結婚は私のソレとは大きく違っている気がする。
私が想像していたのはもっと冷たく、お互い無関心な関係だったのに……
「……もしもの話ですよ。この契約期間が終わる時、もし私が匡介さんと————」
「すみませーん、早く前に進んでもらっていいですかあ?」
後ろから声をかけられてハッと正気に戻る、私は今さっき匡介さんになんてことを聞こうとしてたの? 後ろの少女たちが声をかけてくれて良かった。
「すみません。ほら、行こう杏凛」
「はい、すみませんでした」
匡介さんはさっきの続きを確かめようとはしない、もしかしたらそれが彼の答えなのかもしれないけれど。複雑な気持ちのまま私と匡介さんは8番シアターへ。当然のように彼の隣に並んで座る事になった。