桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
匡介さんの言葉に甘えてゆっくりと浸かって身体を癒す、今夜から二人でこの家で暮らすと思うとやはり不思議な気持ちになる。
きっと彼は私との契約結婚の期間中は、誠実な夫になってくれるでしょう。私もそれに応え彼に迷惑をかけない妻にならなければ……
ふやけそうになるほど長湯をしてしまった、そろそろ上がらなくてはと身体を浮かせようとする。
「杏凛、随分長いが大丈夫か?」
浴室の扉の向こうから匡介さんの声が聞こえて、慌てて浴槽に身体を沈める。あちらから見えていないとは分かっていても、反射的にそうしてしまう。
「だ、大丈夫です! 今からあがりますから」
「そうか、杏凛が無事なのならばいい。急かしているようで悪かった」
すぐに匡介さんの足音は遠のいていく。もしかして私が遅いから心配して、それだけのために……?
あの強面で心配性だなんて想像も出来なかった、人は見かけによらないとは言うけれど匡介さんもそうなのかしら?
私はいつも遠くからあの人を見たことしかなかった、両親から聞いた話や調査書に彼が心配症だなんて書いてはなかったもの。
「ふふふ、変な人……」
なんとなく面白くて、笑ってしまう。この時はまだ匡介さんが私にどれだけ過保護になるかなんて思いもせず、彼の意外な一面を知れたのを楽しんでいるだけだった。