桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
嫌われていたって平気、妻として必要とされなくても大丈夫だとちゃんと割り切ってこの人のもとに嫁いできたはずなのに。
もしかすると私は自分で思っていたよりもずっと、夫である匡介さんの事を特別に思っているのかもしれない。
彼の優しい言葉に素直に甘える事が出来るのならば、私たちの関係はただの契約結婚の相手ではなくなるのだろうか? それとも私が匡介さんにとって重たい存在になる?
ずっとグルグル回るばかりで、二人にとって良い答えが何かを見つけられないの。
「……その、祖父の会社の立て直しはどうなっているでしょうか? おじい様からは順調だと聞いてますが」
「ああ、心配はいらない。約束の期間内には必ず間に合わせてみせる」
その言葉にズキリと胸が痛む。それを望んでこの人と結婚したはずなのに、立て直しが成功すれば私たちの結婚生活も終わる。
匡介さんはその事を眉一つ動かさずに、平気な顔で話すことが出来るのね。そんな小さなことにもショックを受けている自分が嫌になる。
「もし、私が匡介さんの会社で働きたいと言ったら……どうしますか?」
「……杏凛が?」
もちろん私だってそれが簡単に出来ない心身の状態だという事は分かってる、けれどこのまま何も役に立てないお荷物のままこの関係の終わりを待つのは嫌だった。
少しでも私自身が匡介さんに必要とされたならば、未来も変わるんじゃないかって。
けれど、そんな私の言葉は顔を顰めた彼からあっさりと却下される。
「それは出来ない、悪いが俺の会社で君を働かせる気は少しも無いんだ」