桃色溺愛婚 〜強面御曹司は強情妻を溺愛し過ぎて止まらない〜
その迷いなくハッキリと言われた言葉が胸にグサリと刺さる。私はどこかで匡介さんならば私の我儘を聞いてくれるのではないかと少し期待していたのかもしれない。
駄目もとで彼に話したことだったけれど、その返事にかなりのショックを受けることになってしまった。
「そうですよね、変な事を言ってしまってごめんなさい。今まで一度も働いたことのない私なんて、足手まといですよね」
この症状が出始めたのは高校生の時だった、そのため大学は何とか卒業させてもらえたが就職は両親に止められてしまった。
それなりに裕福な家で育った私はそれでも困る事は無い、だからといって満たされることもなかったけれど。
ただ何も出来ないままより、祖父や匡介さんの力になれれば……私も頑張れるんじゃないかって、そう思ったのに……
これ以上は何も言葉にできなくてただ黙って俯くことしか出来なくなっていた。
「勘違いしないで聞いてくれないか? 杏凛の気持ちは嬉しい、だが君がこの会社に勤めて鏡谷の御曹司である俺の妻だと分かればよく思わない社員もいるだろう。今の杏凛にそう言った負担を負わせたくは無いんだ。俺としては今は君の精神的な安定を優先したい」
「……そう、ですか」
分かってる、匡介さんが私の事を妻として心配して言ってくれているってことは。けれど自分に出来る事が何もないように感じて、悲しくもあった。