魔法の恋の行方・魔女の告白(シリーズ4・バージルとレティシア)
<舞踏会・廊下・19時45分>

化粧室か・・
バージルが廊下に出ると、
レティはヤモリのごとく壁に張り付いていた。

そして
4人ほどの青年貴族に包囲されていた。
しかもレティの手には、
ホールケーキの乗った大皿がしっかり握られている。

「どちらから、いらしたのですか?」
「お名前は?」
「ダンスのお相手をお願いしたいのですが・・」

青年貴族の質問攻めに合って、
動きが取れなくなっていた。

バージルが大きな声を出した。

「彼女は私の連れなのでね。
君たち、ちょっと失礼するよ!」
バージルはすぐにレティの手から
大皿を取り上げ、
片方の手でレティの手を握り、
廊下を歩きだした。

青年貴族たちはがっかりしたように、肩をすくめ
お互いを見あっていた。
「キャラウェイ卿のお相手か・・・」

「ああ・・ケーキが・・」
レティの声を完全無視して、
バージルは近くにいた給仕に、
ホールケーキの乗った皿を渡した。

「忙しい所悪いが、すぐに控室を
一部屋用意して欲しい。
彼女の気分が悪いのでね」

そう言って、
給仕の手に紙幣を握らせた。
給仕がうなずいて、すぐに立ち去るのを確認すると
バージルは不機嫌そうに
「勝手に動くな。
君は可愛いのだから、男に食われてしまうぞ」

レティは意外そうな顔をして
「食われるって・・?」
バージルは素早く周囲を見回すと、早口で言った。

「部屋には食べ物とワインをすぐに運ばせる。
60分したら帰るぞ」

給仕が部屋の確保ができたという合図をしたので、
バージルはレティの手を握り、
さっさと歩いて行った。



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