魔法の恋の行方・魔女の告白(シリーズ4・バージルとレティシア)
<大学・講堂・16時>

バージルは、
講堂の後ろの扉をそっと開けた。

講堂は階段教室になっており、
後ろは窓がないので、いつも薄暗い。
バージルは一番後ろの席に座った。

講堂の前、
中央でシスターが話をしていた。
シスターは眼鏡をかけていたが、
まだ、若く20歳代に見えた。

グレーの服に、同じグレーのベールが髪を覆って(おおって)いる。
胸の金の十字架が、時折輝いて見えた。

落ち着いていて、気品がある・・
清楚で神に仕える人だ。

時折、
資料を見るためにうつむく姿は、
聖母マリアの彫像のように見えた。
しかし、
その唇は、紅をさしたように紅い。
化粧をしていないのに、
白い肌と紅い唇に、目が奪われる。

「カドリーネの巨石群は、まだ知られていませんが、
太古の宗教・祭祀(さいし)
行われた形跡がありますね。
とても興味深い遺跡です」

シスターは顔を上げて微笑んだ。
その瞳は・・
青と緑の色合いだった。

「それでは授業は終わりです。
次回は先生が変わりますので、教室が変わります。
注意してくださいね。
皆様に神様の祝福がありますよう」

シスターは丁寧に、学生たちに頭を下げた。
学生たちがぞろぞろ講堂から出て行った。

バージルは
ずっと後ろの席に座って、シスターの様子を見ていた。
シスターはまだ、気が付いてはいない。

彼女は眼鏡をはずすと、
ふうっと息を吐いて、本や資料を片付け始めた。
夕方の広い講堂は薄暗く、もう誰もいなかった。

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