彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
 
 カラーン…カラーン…。
 チャペルの鐘が鳴り響く。


 扉が開いて外へ繋がる階段へと、柊と樹里が出てきた。

 すると…。

 
 外には宇宙と優とジュリーヌ、そして少し離れた場所に大紀もいた。

「あれ? どうして? 誰も呼ばない筈だったのに…」

 柊が驚いていると、ゆっくりと宇宙が歩み寄って来た。

「2人共おめでとう」

 シャキッと礼服に身を包んでいる宇宙を見て、柊は驚いた目を向けた。

「驚かせてごめん。ここのチャペルは、僕と風香が結婚式を挙げたチャペルなんだ」
「え? そうだったのですか? 」

「ああ、そうだよ。そして、偶然にも上野坂さんもここで結婚式を挙げたそうだよ」

 え? 
 樹里はゆっくりと優とジュリーヌを見た。

 優は樹里に優しく微笑んでくれた。
 その笑みを見ると、胸の奥から込みあがってくるものを感じた樹里。

「僕は時々、このチャペルに来て教会でお祈りしているんだ。風香の事を思い出しながら、いなくなってしまった娘の事をずっと祈っていた。どうか無事でいて下さい、そして誰よりも幸せになって下さいとね」

 言いながら宇宙はそっと樹里を見つめた…。
< 103 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop