彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
「樹里ちゃん。驚いたよ、ドレス姿が風香とそっくりだから」
そう言ってフイッと視線を反らした宇宙は、ズルっと鼻をすすった。
どうやら泣いている顔を見られたくないようだ。
「柊君…」
歩み寄って来た優とジュリーヌ。
「実は…私とジュリーヌも、ここで結婚式を挙げたんだ。私も、ここの教会によく来てお祈りしていた。…私とジュリーヌにも、産まれて間もなくしていなくなってしまった子供がいてね。その子の無事をずっと祈っていたよ」
え? と、驚いたような目をして柊は優を見つめた。
だが…
「あの…。実は俺、ずっと前から気づいていました。…」
「え? 」
「ジュリーヌさんが俺の家に来た時から、何となく感じていたんです。ジュリーヌさんが、本当のお母さんではないかと」
優とジュリーヌは顔を見合わせ驚いた表情を浮かべた。
「俺、知ってましたから。宗田家の本当の子供ではない事。父さんも母さんも、何も話してくれないし、そんなそぶりは見せなかったのですが。どこか違うと感じ取っていました。なので、ジュリーヌさんが家に来てくれた時とっても嬉しかったのです」
ジュリーヌはゆっくりと柊を見た。
一緒にいた20年…柊を見ていると、ジュリーヌはホッとできた。
何も覚えていなくて不安な日々だったが、柊を見ていると落ち着き安心できた。
同じ赤い瞳の柊が笑いかけてくれることが嬉しくて、柊が喜ぶことをいっぱいしてあげたいと思っていた。
見ていると柊は優にも似ている…そして大紀にも似ている所がある。
「私も…貴方を見ていると、すごく安心できました。何も分からない中、貴方の笑顔が嬉しくて本当の子供ならどんなにいいかと思っていました」
柊はそっと優を見た。
「お父さん…」
柊にお父さんと呼ばれると、優は胸がキュンとなった。
「これからは、本当のお父さんだと思っていいですか? 」
「ああ、構わないよ。私も、本当の息子が戻って来てくれたと思っているから」
柊と優が言葉を交わしてり姿を見ながら、宇宙は樹里を見つめた…。