彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
樹里はまだ、どこか素直になれないのか視線を落としたまま黙っていた。
そんな樹里の姿を見ていると、宇宙は風香と結婚式を挙げた日を思い出す。
顔の事を気にしていた風香は、結婚式をやりたくないと言っていたが、宇宙がどうしても結婚式をやりたいと言い出してチャペルを予約した。
ずっと俯いたままの風香だったが、それでもちゃんと結婚式をやれたことに宇宙は満足していた。
今の樹里はその時の風香とよく似た表情をしている。
今は何も言わなくていい…どちらにしても、あの子が戻って来てくれたのは変わらないから…。
宇宙はそう思っていた。
少し離れた場所で、大紀はそっと見守っていた。
「…やっぱり、あいつは俺の本当の弟だったんだ。…初めて見た時、父さんに似ているって思ったから。カッとなったのも、父さんに言われているようでムカついたようなものだったからなぁ…」
柊を見て大紀は嬉しそうに微笑んでいた。
柊も樹里も誘拐された犠牲者だった。
しかし、結婚という形で本当の両親の元へ戻って来たようだ。
2人を繋いだのは100憶という大金だった。
だがそれも運命の形だったのかもしれない。