彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
樹里は2年前に検察官を止め、1年ほど柊の秘書として働いていたが2ヶ月前に退職した。
結婚式を挙げてから、柊とは随分と仲良くなりずっと2人でいる人生も全く悪くないと話していた。
双子の姉の楓ともテレビ電話で連絡を取りあうようになり、初めは戸惑いもあったがやはり血を分けた姉妹だけあり仲良くなると空白だった時間は関係ないほどになっていった。
毎日のように電話したりメールしたりと、柊との会話よりも楓との会話が多いくらいだった。
子供が産めなくても何問題はない、どうしても子供が欲しかったら特別養子縁組だってできるんだからと楓が話していた。
しかし…思いがけない奇跡が起こった。
樹里が柊の秘書になって半年経過する頃だった。
何度か婦人科を受診しても、子供を授かる事は難しいと言われていたが。
体調がおかしいと受診すると妊娠している事が判明した。
医者も驚く事で自然妊娠できたことは奇跡だと言われるくらいだった。
安定期に入るまで心配だったが、順調に経過して行き8ヶ月まで働いていた樹里。
8ヶ月になると、さすがに通勤も苦痛になって来て退職して子供が産まれるのを待っていたのだ。
「ホンギャー」
赤ちゃんの産声が聞こえて来た。
「おめでとうございます。可愛い双子の女の子と男の子ですよ」
産まれたばかりの赤ちゃんを見せてくれる助産師さん。
出産を得たばかりの樹里が嬉しそうに赤ちゃんを見ている。
授かったのは双子の赤ちゃん。
女の子と男の子が一緒に来てくれた事も奇跡である。
出産の報告に駆けつけて来ていた柊に、助産師さんが赤ちゃんを見せに来てくれた。
産まれたばかりでとても小さい赤ちゃんが2人もいる事に、柊は感動のあまり涙が溢れてきた。
「産まれたばかりの赤ちゃんって、こんなに小さいのですね」
男の子を抱っこした柊は胸がいっぱいになった。
「柊! 産まれたのか? 」
宇宙も駆けつけて来てくれた。
「父さん、無事に産まれました」
助産師が、女の子の赤ちゃんを宇宙に渡した。
赤ちゃんを受け取った宇宙は、楓と梢が産まれた時の事が思い出され涙が溢れてきた。
「…来てくれて有難う…。楓と梢にそっくりだね…」