彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
手を握ったまま歩き出す柊と樹里。
港の片隅にある、オシャレなホテル。
ラブホテルように見えるが、普通のホテルよりちょっと高級そうな綺麗な建て具合。
「樹里さん、今夜はここに泊りましょう」
「え? 」
「だって俺達、結婚したのに新婚旅行も行っていませんから。それに…」
柊は赤くなり樹里を見つめた。
「…2人の初めて…まだですから…」
2人の初めて?
そう聞かされて、樹里も赤くなった。
「あ…その…。家だと父さんがいて、気を使っていると思いますし。お互い忙しくて、寝る時間もバラバラなので…」
「そうですが…」
「俺、樹里さんと一生傍にいたいです。そんなこと言えない身分なのは、十分に承知しておりますが…だめですか? 」
不安そうな目をして見つめてくる柊に、樹里は胸がキュンとなった。
「だめではありません…。いいですよ、行きましょうか」
はぁ…。
行きましょうかと、勢いで言ってしまったけど…。
樹里の手を引いて柊は、ホテルの中に入って行った。
オシャレなホテルはなんとなくラブホテルのような雰囲気にも見えるが、フロントもあり普通のビジネスホテルのような感じがする。
感じの良い女性の受付がいて、柊と樹里が入ってくるとニコっと笑って出迎えてくれた。
手際よく柊が受付をしてくれて。
戻ってくるとまた手を繋いで、一緒にエレベーターに乗った。