彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
「ねぇ樹里さん…」
スーッと樹里の前髪をかき上げた柊…。
「樹里さんって、とても綺麗な目をしているのですね。…瞳の色、とても綺麗です。お爺ちゃんが、同じ瞳の色をしていたのを思い出しました」
「そう…ですか。…いつも、気持ち悪いと言われていたのですが…」
「そんなことありません。初めて見た時から、とても綺麗な目をしていると思っていました」
前髪をかき上げていた柊に手が、そっと樹里の両頬に添えられた。
温かい両手でふわりと包み込まれると、心までほっとさせられる…。
「今夜は、樹里さんとこうして時間を作れてよかったです。もう、遠慮しなくていいですよね? お互い、本当の事を話せたのですから」
言いながらスーッと柊の顔が近づいて来た。
間近で見ると、とても綺麗な顔立ちの柊…
だが、やはり樹里はどこかで見覚えがある顔に見えて仕方なかった。
「愛しています…」
そう囁かれて瞬間。
ふわりと暖かい柊の唇が、樹里の唇に重なった。
唇からすーっと体の奥の方まで浸透するかのように、伝わてくるエネルギーはまるで乾いた心に潤いを与えてくれるように優しく染みわたって来る。
ちょっとぎこちなさそうに、軽く繰り返されるキスに、樹里は不思議な気持ちを感じた。
結婚の約束をした人がいるのに、ぎこちないキス?
今までキスした事ないの?
そう思った時。
スルっと、柊が樹里の口の中へと入って来た。
ついばむようなキスをしていた柊が、グイグイと攻めてくるのを感じてギュッと柊の腕にしがみついた樹里。
口の中を覆いつくされてしまい、深いキスを繰り返されると頭が真っ白になりそうになった。