彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
今更指輪なんて別にいらない…。
結婚式だって、しなくていいって言ったらそのまま結婚式しないまま入籍だけ済ませたくせに。
なんで今更指輪なんて買うの?
樹里が不平不満を抱いていると、柊は店員さんに指輪を見せてもらい目を輝かせて喜んでいる。
結婚なんて…なんでしたんだろう?
私…
ふと、樹里は店の外でベビカーを押している子供連れの家族が目に入った。
(将来子供を産むのは無理でしょう…)
樹里の頭によぎった言葉。
それは…
樹里が高校生の時。
毎回、生理痛が酷くて病院を受診した。
毎月順調に来るわけでもなく、数ヶ月に一度だったり半年来ない時もあった。
高校生になり2ヶ月に一度はきていたが、毎回寝込むほど生理痛が酷く困っていたのだ。
婦人科を受信すると、栄養が行き届いていないようだと言われ、バランスが悪い為不順で排卵も不定期故に2ヶ月に一度しか生理が来ないようだと言われた。
薬を飲んで様子を見る事になったが、子宮の様子などを見て将来子供を産むのは無理でしょうねと言われたのだ。
まだ成長段階でもあるため、決定づけたことは言えないとは言っていたが。
薬を飲んでいても改善されることはなく現在まで至る。
今までお見合いしてきた人は、後継ぎを望む人ばかりだった事から樹里はいつも断っていた。
柊とのお見合いは跡継ぎの事は何も言わず、2人で幸せになってほしいと言われた事から承諾した。
ベビカーに乗っているのは、まだ生まれて間もないような赤ちゃん。
夫婦共々に幸せそうに笑っている。
(あんたなんか、産まれて来なければよかったのよ! どうしてなの? なんで満点じゃないの? )
樹里はよく母親からそう言われていた。
テストはいつも満点じゃなければ酷く怒られ、完璧であれと言われていた。
だが満点を取っても誉めることはなく、当たり前だと言われるばかりだった。