彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
広い洋間に机と椅子と本棚。
カーテンは厚手のブルー系で、爽やかな感じが広がっていた。
中央にはくつろげる白いソファーと木材のテーブルが置いてあり、テーブルの上にはティーセットとポットが置いてあった。
甘いものが好きなのか、チョコ系のお菓子が沢山置いてあり、どのお菓子もブランド品の高級菓子だった。
名前は聞いていて、よく父の優が買ってきてくれたことがあったのを覚えている樹里だが。
いつも樹里には食べさせてもらえなかったお菓子だった。
テーブルを横目に机に歩み寄って行くと。
机の上にはパソコンと、その近くに写真建てが置いてあった。
その写真建てを見て、樹里は真っ青になった。
写真は家族写真だった。
一枚は、赤ちゃんを抱っこした、まだ若かれし頃の宇宙と隣には宇宙の妻であった風香がもうひ織の赤ちゃんを抱っこして写っている写真があった。
そしてもう一枚は…
柊が小学校を卒業した時だと思われる写真があった。
その写真には、スーツ姿の宇宙と小学校の制服を着た幼い柊ともう一人女の子が写っていて、女の子の隣にはとても綺麗な女性が写っていた。
その女性は、樹里が携帯で見ていた写真に写っていた優の隣にいた女性だった。
「お母さん…やっぱり、あの話は本当だったのね。…」
写真を見て樹里はわなわなと震えていた。
女の子の隣にいる女性は、クールな目つきはしているものの優の隣にいるときよりも穏やかな表情で笑っていた。
「どうして? なんで、こんなに穏やかに笑っているの? 」
驚きつつも樹里は怒りが込みあがっていた。
写真に写る母は、樹里には見せたことがない穏やかな表情で笑っている。
ずっと探してた母親が、小学生の柊と一緒に写っているとは…。
「許さない…絶対に…」
写真を見つめ、樹里は怒りが込みあがるのを必死に抑えて宇宙の部屋を出て行った。
「樹里ちゃん、話したい事があるんだ。今夜、僕の部屋に来てくれない? 」
宇宙に言われてハッとなった樹里。
「来てくれるよね? だって、樹里ちゃんは…ずっと、僕の事を憎んでいるんでしょう? 」
憎んでいる。
そう言った宇宙の目は、とても悲しそうな目をしていた。