彼と彼女の取り違えられた人生と結婚

「憎まれていて、当然だと僕は思っている。僕の部屋に入らないように言ったのは、わざとなんだ」

 はぁ? 
 どうゆう事?

 樹里はちょっとだけ宇宙を見た。

「だって、部屋に入らないでって言われたら。きっと、入りたくなるって思ったから」

 なにそれ。
 ただの屁理屈じゃない。

 ムスっとしたまま樹里は俯いた。


「僕は、ダメって言われると逆にやりたくなるから。きっと樹里ちゃんもそうじゃないかって思っていたんだ」


 あんたと一緒にしないでよ!

 ムッとしたまま俯いている樹里を見て、宇宙も辛そうな目をしていた。


「僕もちゃんと話したい事があるんだ。樹里ちゃんと、本当の家族になりたいから。隠し事はしたくないから」

 
 本当の家族になんて、私はなる気はない。
 なれないし…
 でも、話を聞くくらいならいいかもしれない。

「…わかりました。…伺います…」

 小さく答えた樹里。

「有難う。何時になっても構わないから、待っているね」


 それだけ言うと、宇宙は瓶を持ったままリビングを出て行った。


 あの瓶持っていかれた…。
 小さくため息をついて、樹里は夕食の準備の続きを始めた。




 暫くして夕食が出来上がると、柊が部屋から出てきてリビングにやって来た。

 美味しそうに並んでいる夕食を見ると、嬉しそうな声を上げて椅子に座った柊。
 
 少し遅れてやって来た宇宙も、夕食を見て嬉しそうな声を上げて椅子に座ってきた。

 親子って似ているんだ。
 樹里はそう思いながら夕食を食べ始めた。


 夕食が終わり、かたずけをして、お風呂を済ませて。
 柊は先に寝てしまったようで、樹里が寝室に来るとぐっすり眠っていた。

 まだベッドはシングベッドで別々。
 一緒に寝たいと言っていたが、ベッドが届くまでは別々になりそうだ。



 時刻は深夜0時を過ぎた頃。

 樹里は約束通り宇宙の部屋にやって来た。

 
 パジャマの上に黒いカーティガンを羽織り、いつものようにメガネをかけてやって来た樹里を笑顔で迎えて部屋に入れてくれた宇宙。

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