彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
 
 翌日。

 樹里より先に目を覚ました宇宙。

 隣でぐっすり眠っている樹里を見て、宇宙はとても幸せを感じた。

 この広いダブルベッドで宇宙がずっと寝ているのは、風香との思い出を忘れたくないから。
 もともと背の高い宇宙はキングサイズのベッドでしか眠れない。
 風香と一緒に寝たくてキングサイズのダブルベッドを取り寄せて、ずっと待っていた。

 このベッドで風香と初めて一緒に寝た時。
 風香は記憶障害で宇宙の事を忘れていた。
 だが、風香と繋がって断片的に記憶が戻り始めて…。

 そんな風香と再び結ばれて。
 授かったのが楓と…樹里…。


 28年も行方不明だった我が娘が、息子の結婚相手として戻って来てくれるとは。
 これを運命と呼ばずになんと呼べばいいのか。




 
 いつものように朝が始まった宗田家。
 今日は日曜日だが、柊は降り引き先と打ち合わせが入っている為出勤することになっていた。

 
 樹里はいつもより少し遅く起きてきて、朝食の準備をしようとしたが、先に宇宙が起きていてお味噌汁を作ってくれていた。

「おはよう。先に起きたから、お味噌汁だけ作っておいたから」

 食卓に食器を並べながら宇宙が言った。

 樹里はふと調味料が並んでいる棚を見た。


 昨日。
 宇宙が見つけた赤い小瓶は、ないままだった。


 まさか…アレを入れてないわよね? お味噌汁の中に…。

 一瞬ゾクっとした。

 そんな樹里を見た宇宙は。

「あのね、昨日の小瓶だけど。もう処分したから、安心して」

 処分した? 本当に?

 まだ半信半疑な樹里は、複雑そうな顔をしたまま朝ごはんの準備を始めた。




 間もなくして、柊が起きて来た。

「おはようございます」

 いつもと変わらないままの柊。
 昨夜は隣りのベッドに樹里がいなかったこと、気が付いているのだろうか?

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