彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
20年の空白
「いらっしゃい樹里ちゃん。ここはね、僕が今の家を建てる前に住んでいた家なんだ」
「え? 」
「ここは風香との思いだが沢山詰まっているから、何があっても手放したくなてね。会社が倒産しそうになっても、お屋敷が奪われそうになっても絶対に手放さないと決めていたんだ。僕が一軒家を建てたから、暫くは僕の両親が住んでいたんだけど。今はアメリカの娘の下に行ってしまったから、誰も住んでいなかったんだ」
誰も住んでいないって…お母さんが住んでいるんじゃないの?
樹里は複雑そうな顔をしていた。
「ジュリーヌさんは、記憶を無くしてからずっと僕達とここに住んでいたんだ。一軒家が建ってから、そっちで住んでいたけど。記憶を取り戻してから、離れて暮らしたいと言われてね。丁度、僕の両親がアメリカに行く事になったから。ここにジュリーヌさんに住んでもらう事にしたんだ」
ふーん。
こんな広い家に一人で住むなんて贅沢すぎるけど。
「ここに座って」
食卓の椅子に案内され、樹里はフカフカのクッションがある椅子に座らされた。
「ちょっとまっててね、お茶入れいるから」
「いえ…結構です…」
ちょっと可愛くない事を言った樹里を、宇宙はクスッと笑った。
「せっかく来ていくれたんじゃないか。それに、お母さんと会えたんだよ。ゆっくりしてい行けばいいよ。ここは、樹里ちゃんの家でもあるんだから」
私の家? ちょと違うけど…。
そう思いながら黙っていた樹里。
宇宙が手際よくお湯を沸かし始めると、ジュリーヌがティーセットを用意して棚からお菓子を取り出して用意し始めた。