彼と彼女の取り違えられた人生と結婚

 少しすると。
 手術室から男性医師が出てきた。

「お身内の方ですか? 」
「はい、運ばれたのは私の息子です」

「それは良かった。お父さんの血液型は何型ですか? 」
「僕はO型です」

「そうですか…。患者さんはAB型なのですが、どなたかAB型の方はいらっしゃいますか? 」

 宇宙は樹里を見た。

「あ…すみません。私は、O型なので…」

 申し訳なさそうに視線を落とした樹里。

「病院にAB型の血液は、ないのでしょうか? 」
「はい。あにく本日大きな手術が行われたので、AB型の血液を使ってしまったので。今、他の病院にも問い合わせているのですが」

 
 このままでは柊が死んでしまう…。
 どうしよう…。


「あの…私の血を使って頂けますか? 」

 小さな声で現れたはジュリーヌだった。

「お母さんですか? 」
「あ…はい…。私、血液型はAB型です。私の血でよければ、使って下さい」

「助かります。どうぞこちらに」

 医師と一緒にジュリーヌは処置室へ入って行った。


「お母さん…AB型だったのね…。そうよね、私とは親子じゃないから…」

 悲しそうな目をして呟いた樹里。
 そんな樹里の傍に歩み寄り、宇宙はそっと樹里を抱き寄せた。

「もうそんな事は考えなくていい。…ジュリーヌさんはきっと、樹里ちゃんの事を本当の子供だと思って育てていたと思うよ。柊と同じ血液型なのは、ちょっと驚いたけど。でも…樹里ちゃんは、僕お同じ血液型だったんだね。なんだか嬉しいよ」

 嬉しいと言われても樹里は複雑な気持ちだった。
 
 なんで柊は刺されたのだろうか?
< 51 / 109 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop