彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
少しすると。
手術室から男性医師が出てきた。
「お身内の方ですか? 」
「はい、運ばれたのは私の息子です」
「それは良かった。お父さんの血液型は何型ですか? 」
「僕はO型です」
「そうですか…。患者さんはAB型なのですが、どなたかAB型の方はいらっしゃいますか? 」
宇宙は樹里を見た。
「あ…すみません。私は、O型なので…」
申し訳なさそうに視線を落とした樹里。
「病院にAB型の血液は、ないのでしょうか? 」
「はい。あにく本日大きな手術が行われたので、AB型の血液を使ってしまったので。今、他の病院にも問い合わせているのですが」
このままでは柊が死んでしまう…。
どうしよう…。
「あの…私の血を使って頂けますか? 」
小さな声で現れたはジュリーヌだった。
「お母さんですか? 」
「あ…はい…。私、血液型はAB型です。私の血でよければ、使って下さい」
「助かります。どうぞこちらに」
医師と一緒にジュリーヌは処置室へ入って行った。
「お母さん…AB型だったのね…。そうよね、私とは親子じゃないから…」
悲しそうな目をして呟いた樹里。
そんな樹里の傍に歩み寄り、宇宙はそっと樹里を抱き寄せた。
「もうそんな事は考えなくていい。…ジュリーヌさんはきっと、樹里ちゃんの事を本当の子供だと思って育てていたと思うよ。柊と同じ血液型なのは、ちょっと驚いたけど。でも…樹里ちゃんは、僕お同じ血液型だったんだね。なんだか嬉しいよ」
嬉しいと言われても樹里は複雑な気持ちだった。
なんで柊は刺されたのだろうか?