彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
 
 ジュリーヌが輸血をしてくれている間に、金奈警察の刑事が宇宙の下にやって来た。

 いかつい顔をした男性刑事だが、言葉使いは丁寧でとても優しい人だった。

 目撃者の証言から、チャラそうな男が柊に言いがかりをつけているところを目撃されていた。
 そして掴みかかって、何か脅していた様子も目撃されていた。
 
 柊が電話に出て話している所を、後ろからチャラい男が刺したと多数の証言が得られているが、チャラい男はそのまま逃げてしまった。

 
 近場の防犯カメラに写っていたチャラい男の写真を見せ、刑事は心当たりがるかどうか宇宙に聞いたが、宇宙は全く知らない人だと答えた。
 それもそうだろう。
 宇宙は大紀とは会ったことはないのだから。
 樹里と結婚が決まって顔合わせになっても、一緒に来たのは優だけだった。
 入籍しかしていない事から、結婚式は行っていない為親族が集まる事もなく、ただ樹里には兄がいるとだけ聞かされているだけだった。


 現場の状況から見て、警察ではガラの悪い男がお金欲しさに脅して、思うようにならなかった事から柊を刺したのではないかと断定された。

 柊は今日は処置もあり麻酔もきいていることから、事情徴収は明日以降にすると言われ刑事は帰って行った。

 

 刑事が帰ってから暫くして、柊の処置が終わった。

 輸血をしてもらった事から一命をとりとめ、もう大丈夫だと言われたが、傷が深かった事から1週間ほど入院になった。
 退院しても暫くは自宅療養して通院してもらわなくてはならないと言われた。

 
 個室の病室へ運ばれた柊は麻酔が効いてぐっすり眠っている。
 
 すっかりよふも更けって時刻は21時を回ろうとしていた。

「今夜は僕が見ているから、樹里ちゃんはジュリーヌさんと一緒にマンションに戻ってゆっくりしていいよ」
「いえ、私が見ています。一応、私は柊さんの妻ですから」

「そうだけど。お母さんと、2人で話したい事もあると思うんだ」
「いえ、話したい事などありません。…まだ半信半疑で、信じられない事も多いので」

「そうか。じゃあ、今夜は樹里ちゃんに頼もうかな。柊も、目が覚めた時に樹里ちゃんがの顔を一番い見た方が元気が出るかもしれないからな」
 
 そうゆうわけではないけど。
 今は、母と2人にはなりたくないし、かと言って家に戻っても同じ事だから。
 
 1日にバタバタと一度に大きな事が起こり、さすがの樹里も疲れを感じていた。

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