彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
ジュリーヌもいなくなった子供を思い出すかのように、とても大切に育ててくれていた。
そう思われていたが…
大紀とのすれ違いが生じ、樹里へ過剰になりいつも「完璧」を求めるようになってしまった。
樹里の事を立派な女性に育てる事が自分の使命だと、ジュリーヌはいつも言っていた。
それ故に完璧にと、幼稚園から名門私立に通わせ大学までエスカレーター式で上がれる学校へと通わせていた。
しかし樹里が小学生になった頃、ジュリーヌはいなくなってしまった。
年の離れた大紀はろくに勉強もしないまま、私立高校から私立大学に進学してほとんど遊んでいた。
就職も優の会社へ就職して、コネでアメリカ支社の副社長として就任していたが、ろくに仕事をする事もなくいつも女遊びばかりして会社のお金を使いこむことまでしてしまい、見かねた優が解雇した。
大紀が使い込んだお金は、優が全て何とかしたが。
日本に帰ってからも大紀は定職につかないまま遊んでばかりで、樹里にいつも酷い事を言ってばかりだった。
樹里が就職してからは、樹里からお金をたかる事も増え見かねて優は大紀を家から追い出し、カードも通帳も使えなくしてしまったのだ。
そん大紀が再び現れたのだろうか?
考え込んでしまった優は溜息をついた。
プーッ…内線が鳴った。
「はい…。分かった、繋いでくれ」
外線が入り通されたようだ。
「はい、お電話代わりました上野坂です」
(…すみません。私、中園有希と言います。今、息子さんの大紀さんと一緒に暮らしているのですが。…)
「大紀と? 」
(はい。実は、大樹さんが重い病気を患っているのですが。お金が無くて、病院い行けないのです)
「重い病気とは? 」
(詳しくは検査をしないと分からないと言われました。ですが、検査をするにはお金がかかるのですが。そのお金が無くて、困っているのです)
「どちらの病院で検査をされるのですか? 」
(正式には決まっていません。多分、金奈総合病院に行くと思います)
「そうですか。それで、検査にはどのくらいのお金が必要なのですか? 」
(はい。検査費用など全てを合わせると、100万ほどは必要だと思われます。特殊な検査になるようなので)
100万? 検査費用にそんなにかかるものか?
ちょっと疑問を感じた優。