彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
柊と楓の写真を見比べながら、優は違和感を感じていた。
そしてよく見ると、柊の瞳は赤い色をしているのが判った。
赤い瞳…。
それは、ジュリーヌも同じ瞳をしていた。
偶然なのか?
サッカーが得意な柊…。
よく見ていると顔立ちが、ジュリーヌと似ているような気がする。
(子供はいなくなってしまって…性別も解りません…)
ジュリーヌはそう言っていた。
柊と樹里は同じ年齢。
まさか…考えすぎだろうか?
優は混乱している頭を落ち着かせるために、一息ついた。
「上野坂さん、僕からもお話しなければならないことがあるのですが」
「なんでしょうか? 」
「いえ、実は。…柊は、僕の本当の子供ではないのです」
「え? 」
まさか…今思ったことは、本当だったのか?
驚いた目を向けた優に、宇宙はそっと微笑みかけた。
「僕の本当の子供は。楓と一緒に産まれた双子の女の子です。その子は産まれて間もなく、何者かに誘拐されてしまったのです。いくら探しても見つからないまま、28年経過しています。子供を誘拐され、妻は酷くショックを受けていていました。そんな時に、柊が公園に置き去りにされていたのを発見したのです。寒い星空の下、泣いているのを妻が発見して警察に届けたのですが誰の子供か判らなくて。児童施設に引き取られる話が出ていたので、我が家の養子に引き取ったのです。妻が、いなくなった子供が帰って来たようで嬉しいと言い出して。…大きな大木の下に、寒さに負けないでいてくれた事から「柊」と名前を付けました。どんな事にも負けないで、強く生きて欲しいと願いを込めて」
「そうでしたか。とても良い名前ですね」
「柊は期待通り育ってくれています。とっても優しくて、私は何時も柊から学んでばかりですよ。なので、樹里さんにはとても感謝しいます。大切な息子を助けてくれたのですから」
樹里が…
もし、宗田家の本当の娘だとしたら。
やっと自分の家に帰ってこられたのだろう。
優はそう思った。