彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
「それから。今回の、柊の怪我ですが。どうやら、息子さんが関係しているようですね」
「大紀が? 」
「はい。柊は、相手を見ていないと言っていましたが。目撃者によると、相手側から柊に話しかけていたようですので。おそらく間違いないと思います」
そうか。
それで、あの女から大紀を使ってお金の要求が来たのか。
どこか引っかかていた事がスーッと繋がってゆくような感じがした。
「大紀とは、そろそろ決着をつける時だと思っていたので丁度良かったです。ずっと、探していたジュリーヌからも連絡があったので安心していますので」
「そうですか」
「過去を見てばかりでは何も変わりません。謎解きは、追々にして。私は、樹里と柊君が幸せになってくれたらそれでいいと願っております」
「そうですね。これからが大切ですからね」
「今日はお話で来て良かったです。樹里の事、これからもどうぞよろしくお願いします」
「安心して下さい。樹里さんの事、幸せにしますから」
「はい」
その後、優は宇宙と他愛ない話をして宗田家を後にした。
宗田家を後にした優は、そのまま帰路についていた。
帰り道。
金奈総合病院の前を通りかかった優は、時刻を確認した。
20時を回る頃を指しているのを見て、まだ面会時間に間に合うと思い柊の所に寄って行こうと思った。
夜の病棟は静かになりつつある。
まだ面会に来ている人もいて、あちらこちらで通り行く人達が見受けられる。
コンコン。
柊の病室をノックした優。
返事がなく、そっとドアを開けてみると。
ベッドの上で眠っている柊がいた。
付き添いの樹里はまだ来ていないようだ。
眠っている柊の傍に、優はそっと歩み寄ていった。