彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
再会と愛

「あの…」

 声がして優はハッとなり顔を上げた。

 すると…

「あっ…」


 驚いた顔をした優の目が潤んできた。

 潤んだ目のままゆっくりと立ち上がった優の目の前には、あのリッチ―ルヒルズにいたジュリーヌが立っていた。

 今日のジュリーヌは優しいブルー系のワンピースを着ている。
 長い髪は片側で結ってとても上品なジュリーヌ。


「ジュリーヌ…だよね? 」

 名前を呼ばれるとジュリーヌはそっと会釈をした。

「申し訳ございません。お約束は別の場所でしたが、先ほどの方がここに入ってい行くのを目撃したので…来てしまいました…」

 潤んだ目のまま優はジュリーヌに歩み寄って来た。

 20年ぶりに見るジュリーヌは、変わらないままで以前より若く見えた。
 顔色も良く優しい表情のままのジュリーヌを見ていると、胸がいっぱいになる…。


 ジュリーヌの傍に歩み寄って来た優は、そのまま何も言わないままギュッとジュリーヌを抱きしめた。

 ハッと驚いたジュリーヌだったが、優の腕の中はとても温かく安心できた。

「…お帰り…」

 お帰り…そう言われると、ジュリーヌはとてもホッとした。
 20年も離れていて「お帰り」と言ってもらえるなんて思わなかったのだ。

「すまなかった…本当に…」
「謝る事はありません。私こそ、ごめんなさい。長い年月の間、連絡も出来ないままで」

「そんな事はどうでもいい、今ここに君がいてくれるそれだけでいい…」

 そっと体を離した優はとても愛しい目をしてジュリーヌを見つめた…。

「もうどこにも行かないと、約束してくれるか? 」
「はい、もちろんです」

 迷わず答えてくれたジュリーヌ。
 その答えが嬉しくて…優はそのままジュリーヌの唇にキスをした。


 遅い時間の受付には誰もいない…。

 ちょっと戸惑ったジュリーヌだったが、そのままギュッと優の腕にしがみついていた。

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