彼と彼女の取り違えられた人生と結婚

 翌日。
 外は心地よい太陽が輝き清々しいそよ風が吹いていた。

 
 金奈警察署。
 
 大紀はスーツ姿で一人警察署へやって来た。
 柊は何も見ていない、知らないと言ってくれたが、間違いなくあの時に目と目が合っている。
 樹里の身内だからという事で庇ってくれているのか、はたまた大ごとにしたくないのかは分からないが、やはり悪い事をしたのは変わりない事だ。
 新しくやり直すならケジメは付けるべきだと、大紀は自首する事にした。
 
 事件になれば優に多大な迷惑が掛かるのは間違いないだろう。
 だが、罪を隠して更生はできない。
 どんな展開になろうともケジメをつけようと決めた大紀。

 
 警察署に来る前に大紀は優に電話をかけた。

 優は家には戻っていなかった。
 ちょっと外泊すると行って、どこかホテルに泊まっているようだ。


 大紀が自首すると電話をすると。

(私はいつだってお前を信じている。お前がしたようにしなさい。どうなっても、気にする事はない。自分の信念を貫きなさい)
 と言ってくれた。


 
 意を決して大紀は警察署の中へ入っていた。
 緊張した面持ちではあるが、どこかスッキリしている大紀は優と同じ目をしてた。




 病院では。

「すごいですね。傷口もすっかり塞がっていて、殆ど完治状態に近いです。もう退院してもだ丈夫なくらいですよ」

 診察に来た男性医師が驚いていた。

「そうですか、それは何よりです。明日にでも、退院してもいいでしょうか? やはり家のほうが落ち着きますので」
「ええ、大丈夫ですよ。後は自宅でゆっくり療養して、少しづつ日常生活に戻して行って下さい」

  
 柊は満面の笑みで喜んでいた。


 

 その頃。
 逮捕された有希は取り調べの中、正直に白状していた。
 学生の頃から柊に取り入って、絶対に離れないように結婚の約束までこぎつけた。
 人の良い柊は断る事はなく、有希の好きにさせてくれていた。

 宗田ホールディングにもすぐに雇ってくれて、ビジネスパートナーのように仕事を任せてくれるようになり経理にも関わらせてくれるようになった。
 
 お金を横領したのは。
 有希がお金に執着する事しか見えていなかったからだった。

 
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