彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
何枚もの書類を見て行くと。
一人だけ成約が失敗した男の子の赤ちゃんが、金奈市の公園に捨てられたことが書かれていた。
人身売買にかかわった犯人の一人が、制約が不成立になった男の赤ちゃんを川に捨てるように命じられたが、あまりにも可愛くて綺麗な顔立ちの赤ちゃんだった事からそんな惨い事はできなかった事から公園に捨てたと証言している。
かなり年月が経過していて、詳しい事は覚えていないと言っていたが、金奈市の公園の場所は覚えていて赤ちゃんの瞳の色が赤色だったことを覚えていると書かれている。
「赤い…瞳…」
ジュリーヌは赤い瞳と言う文字に引っ掛かりを覚えた。
ジュリーヌの産んだ赤ちゃん。
その子は突然いなくなった…産まれたばかりの時、ジュリーヌは大怪我をしていて苦痛の中だったが、病院の先生がとても可愛い赤ちゃんを見せてくれた事を覚えている。
優には何も覚えていないと話したが、ずっとジュリーヌの胸の内に閉まっていたのだ。
これを話してしまうと、大紀がますます心を閉ざしてしまうのではないかと恐れた事もありずっと黙っていた。
書類を読んでゆくうちに、ジュリーヌは鮮明に思い出した。
雨が降っていて足元が滑りやすい日だった。
大紀と一緒に買い物に出かけた帰り道、荷物を持っているジュリーヌを後ろから大紀が突き飛ばした事で階段から転落したのだ。
雨の日で人通りも少なく、転落したジュリーヌん気づく人はいなかった。
大紀はそのまま逃げて行き、遠ざかる意識の中、ジュリーヌはただおなかの赤ちゃんが助かて欲しいとそれだけを祈っていた。
暫くして通りかかった人が気が付き、救急車を呼んでくれて病院へ運ばれたジュリーヌ。
意識不明のまま運ばれて、陣痛で意識を取り戻した事を覚えている。
怪我の痛みと陣痛の両方を味わいながらも、お腹の赤ちゃんはとても安産で4時間足らずで産まれてきた。
頭と右腕を怪我していたジュリーヌだったが、産まれたばかりの赤ちゃんを見せてもらうとその時だけは痛みを忘れ喜びを感じたことを覚えている。