彼と彼女の取り違えられた人生と結婚
名前を聞かれたジュリーヌだったが、自分の名前を名乗り、それ以外は分からないと記憶がないふりをしていた。
優に迷惑をかけたくない事もあり、大紀がもしかすると赤ちゃんに何か危害を加えてくるかもしれないと恐れたのだ。
少し落ち着いてから優に相談しようと決め、一人で出産して全て納めようとしていたのだが、入院中に赤ちゃんが誘拐されてしまい手掛かりもなく失望感だけ抱いたジュリーヌだったが、もしかしたらこれでいいのかもしれないとも思っていた。
怪我が回復して退院して家に戻ったジュリーヌは、何も覚えていないと優に話した。
気づいたら病院にいて、赤ちゃんはどうなったのか分からないと話したのだ。
優は大怪我をして赤ちゃんは、死んでしまったのかもしれないと言って納得していたが、大紀だけは冷めた目をして見ていた。
赤い目をした男の子。
この子がもし、あの時に産んだ子供だとしたら…公園に捨てられた後、どうなったのだろうか?
一息ついてジュリーヌは宇宙を見た。
「ここまで調べるのに、長い年月かかったよ。でも、偶然だったのか運命だったのか。赤い目をした男の子は、僕の下に来てくれたんだ」
赤い目の男の子…
そう言えば柊さんは赤い目をしていた。
初めて会った時、自分と同じ目の色の人だと思ってとても安心したことを覚えている。
あの時生まれた赤ちゃんも男の子で赤い目の子。
まさか…
赤い目の人はこの地上にはいないと思う。
地底には当たり前のようにいたけど、地上に来てからは見たことがなかったから。
「ジュリーヌさん。誘拐された僕の娘は、綺麗な紫色の瞳をしていたよ」
「紫色の瞳? 」
「はい。実は僕も、瞳の色は紫なんだよ」
「え? 」
じっとジュリーヌは宇宙を見つめた。
見ている感じ紫色には見えない宇宙の瞳だが、見ているとどこかで見覚えがある顔だ…。
ジュリーヌがじっと見ていると、宇宙はクスっと笑った。
「そんなに見ないでよ。いつもは、コンタクトしているので分からないようにしているから」
「そうなんですね」
「この瞳の色は、遺伝だから。僕のご先祖様に紫色の瞳の人がいたようで遺伝で受け継いでいるようなんだ」
「そうですか…」
紫色の瞳…。
そう言えば…樹里も紫色の瞳だったような…。
そう思いながらジュリーヌはそ類の続きを読んだ。